過眠・睡眠に関する用語集

アクチグラフ

活動量を計測する小型軽量の長期間記録器で、腕時計型や腰に装着するタイプのものがあります。患者の活動量を計測することで、覚醒・睡眠のリズムや睡眠持続時間の推定に役立ちます。3日から数週間と長く記録できるので、診療機関に入院して行う睡眠ポリグラフ検査(PSG)ができないときや、睡眠表を正確に記録できないと判断されたときの確認のために用いられます。

アンチグラフ

朝型夜型尺度

個人のクロノタイプ(いわゆる朝型夜型)を評価する尺度で、ミュンヘンクロノタイプ質問紙(Munich ChronoType Questionnaire:MCTQ)が一般的です。ヒトは昼行性ですが、活動と休息(睡眠)のタイミングは個人個人で異なります。特に、自由なスケジュールでとることができる休日の睡眠のタイミングは、個人の体内時計の時刻をよく反映します。 MCTQでは、この休日の睡眠のタイミングを、個人のクロノタイプの指標としています。しかし、睡眠不足の人では、休日に長く寝る傾向があるためクロノタイプに偏りが出ます。MCTQでは自然な睡眠のタイミングを知るための工夫がなされていることが特徴の一つです。

アテネ不眠尺度

「アテネ不眠尺度」は世界保健機関(WHO)が中心となって作った睡眠評価法です。世界標準の快眠度チェックリストで、8項目のなかから、過去1カ月間に、少なくとも週3回以上経験したものを選びます。最後に、各選択肢についている点数を合計します。8つの質問項目の各得点(0~3点)を、すべて足し合わせて総得点を出します。これが高いほど不眠が強く、逆に得点が低いほど睡眠の質が良いとされます。総得点が4点未満の場合は、まずまずの睡眠が取れており、総得点が6点以上の場合は不眠症の可能性があると判定されます。

エプワース眠気尺度(ESS)

エプワース眠気尺度は、世界で最も汎用される自記式の質問票で、眠気の重症度を評価します。日常生活で普通にみられる8つの異なる状況(姿勢についても記述しています)において、うとうとする(数秒~数分眠ってしまう)可能性がどのくらいあるかを評価します。質問の状況になったことがない人は回答しない可能性が高いため、日本語版では「その状況になればどうなるかを想像してお答えください。すべての項目にお答えしていただくことが大切です。できる限りすべての項目にお答えください」という表文が追加されています。4段階評価(0~3点)なので総得点は0点から24点までとなり、11点以上の場合過眠ありとされ、16点以上は過眠症の可能性が考えられます(信頼性が高いことから、この「過眠症の杜」でも取り入れています)。

オレキシン

別名ヒポクレチンとも呼ばれます。覚醒維持、摂食・エネルギー代謝促進作用、自律神経系・報酬系への関与など多彩な生理作用をもつ神経伝達物質です。オレキシン産生細胞は視床下部外側野に局在しますが、その神経細胞から広範な脳領域への投射があります。脳脊髄液中オレキシンの異常低値がナルコレプシーの診断指標になっていますが、一方でこのオレキシンが作用しすぎることで不眠の症状をもたらしている場合も想定され、このオレキシンを受容体に結合させないことで、睡眠に導く薬がつくられています。

概日リズム(サーカディアン・リズム)

ある時点での睡眠の起こりやすさは、目が覚めてからどのくらい長く起き続けていたかの時間と、体内時計によって決まります。この体内時計はおよそ24時間の周期をもつことから、概日リズムと呼ばれます。徹夜して眠気が強くなっても日の出のころには眠気が減るのは、この体内時計の働きによるものです。体内時計は地球の自転に伴う24時間より若干長いため、毎日ズレを直す(同調といいます)作業が必要となります。

簡易無呼吸検査

携帯型の装置を用いて行う検査で、呼吸、いびき音、心拍数とSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)の4項目の記録をとります。脳波や眼球運動の記録はとらないため、睡眠の状態はわかりません。正確な睡眠時間も明らかではないため、算出された計測値は、あくまでも推測値とされます。

クロノタイプ

ヒトは、通常は昼に活動的で夜に休息(睡眠)をとりますが、そのタイミングは個人個人で少しずつ異なります。このような時間的なタイミングの傾向をクロノタイプといいます。

クロノタイプは一般的に「朝型夜型」として知られており、朝型の人は朝早くに目覚めて早い時間帯に活発に活動し、夜は早々と床につくのに対して、夜型の人は起床時間が遅く、午後から目が冴えてきて、深夜遅くにようやく眠りにつく、と考えられています。朝型や夜型の中間型である場合が多いです。遺伝的な素因だけでなく、加齢に伴う変化(10歳代では夜型傾向が強く、高齢になると朝型傾向が強くなる)も影響します。

クロノタイプは体内時計の影響を受けており、朝型と夜型の人を比べると、体温やメラトニン分泌といった体内時計に基づく身体機能のタイミングが朝型で早く夜型で遅いことが知られています。

交感神経と副交感神経

交感神経と副交感神経は、正反対の働きをする自律神経です。交感神経は活動しているとき、緊張しているとき、ストレスを感じているときにはたらきます。副交感神経は、休息しているとき、リラックスしているとき、眠っているときにはたらきます。副交感神経が働く時間が短いと、身体が十分に回復できずに、疲れがとれない、目覚めが悪いという症状が出ます。交感神経と副交感神経のバランスがとれていると、昼間の疲れを夜の睡眠でしっかり回復できることになります。

高照度療法

2500ルクスから1万ルクスの強い照明器具を使用して、体内時計の位相をリセットする(おもに前進させる)治療法です。直接光源を見つめなくても目から網膜に強い光がはいることで光の情報が伝えられ、メラトニンの分泌を抑制し、交感神経の働きを活発にして身体を覚醒させ、視交叉上核の体内時計のリズムを変化させます(朝治療を行うことで体内時計の位相は前進します)。

CPAP(シーパップ)療法

CPAPは経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure:CPAP)の略称です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に有効な治療方法として欧米や日本国内で最も普及しています。CPAP療法は、寝ている間の無呼吸を防ぐために、気道に空気を送り大気圧より高い状態の下で呼吸ができるようにする治療です。吸気時に胸腔内圧が陰圧にならないことで、気道が開存できるようになります。CPAP装置からエアチューブを伝い、鼻に装着したマスクから気道へと空気が送り込まれます。

CPAP(シーパップ)療法

時間療法

一定の範囲内(後にずらすなら2~3時間、前にずらすなら30分程度)であれば、睡眠時間にあわせて体内時計も変化しうる、という知見に基づく治療法で、昼夜逆転しているような「睡眠相後退型」重症例の治療に用いられる場合があります。毎日2~3時間ずつ就床時刻を遅らせていき、入眠時刻が患者さんの希望する時刻まで後退したところで、睡眠時間帯を固定する方法です。この方法であれば1週間余りでいったん望ましい時間帯に睡眠が生じるようになりますが、一時的に正常なリズムに戻すことができても、睡眠時間帯の後退が再び始まってしまう例が多いことなどが問題点とされています。

睡眠時間制限法

不眠症の患者さんには頑張って眠ろうとして長時間床に入っている方が多くみられます。その結果、寝つくまでの時間が長くなり、途中で目覚める(中途覚醒)回数も多くなり、結局寝床で目覚めている時間が長くなります。しかし実際の(主観的な)実睡眠時間は短いため熟睡感をもてない傾向があります。睡眠時間制限法では、本人が実際に眠れていたと思う時間を計算して、それより少しだけ長く布団に入るように指導するものです。本人の在床時間が短くなると、短い時間の中で効率よく眠るようになるため、寝つきが良くなり、深く眠れ、中途覚醒も少なくなり、熟眠感が得やすくなります。眠れない時間を悩みながら過ごすことがなくなり不眠症の患者さんは不眠に対する不安が軽くなることが期待されます。

睡眠障害国際分類

米国睡眠医学会が中心になって睡眠障害について分類し、まとめたものです。ここでは2013年に出された睡眠障害国際分類第3版 (ICSD-3)に基づいた説明をしました。睡眠障害を、I 不眠障害、II 睡眠関連呼吸障害群、III 中枢性過眠症群、IV 概日リズム睡眠・覚醒障害群、V 睡眠時随伴症群、VI 睡眠関連運動障害群に6分類し、身体疾患および神経疾患に関連する睡眠障害が付録として記されています。

睡眠潜時

睡眠ポリグラフ検査(PSG)などで計測する、覚醒状態から睡眠状態に入るまでの所要時間のことで、寝つきの良し悪しを示す指標として使われます。

睡眠表

睡眠日誌ともいいます。睡眠の時間や眠気の程度などを患者自身で記録するものです。自分の体調と睡眠習慣や生活リズムの関係に気づくことができ、また、治療者にとっても睡眠状況や重症度の把握、治療効果の判定に役立ちます。

睡眠ポリグラフ検査(PSG)

夜間の睡眠状態を総合的に調べる検査で、身体に複数のセンサー類を装着して脳波、眼球運動、頤筋電図(おとがい、下肢)、呼吸、心電図、体位、酸素飽和度、ビデオモニターなどにより、睡眠を継時的にモニターします。夜間睡眠の問題点を浮き彫りにすることができ、睡眠障害の診断に欠かせないものです。1泊の入院が必要です。

第一夜効果

睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行う際に、電極の装着や記録室の環境・寝具などが被験者の普段の睡眠環境と大きく異なることによる睡眠の質に及ぼす影響。記録第一夜にみられることが多く、記録第二夜以降はあまりみられなくなります。

体内時計

人間は、臓器のほぼすべてに体内時計が備わっていますが、その中心を担っているのが目の奥に位置する「視交叉上核(しこうさじょうかく)」と呼ばれる神経核です。視交叉上核の細胞は(時計遺伝子の転写とその産物によるフィードバックループに基づき)自律的な発振をしていて、体全体の時計に指令を送り、毎日決まった時間にさまざまなホルモンを分泌したり、自律神経の調節、睡眠・覚醒の繰り返しなどの生体リズムを刻みます。

ドーパミン受容体作動薬

睡眠不足の原因となる「むずむず脚症候群」や「周期性四肢運動障害」はドーパミンの機能障害が原因のひとつとなって発症すると考えられています。ドーパミン受容体作動薬はドーパミンそのものを増やすわけではなく、ドーパミン受容体の働きを活性化するものです。神経細胞のドーパミンを受け取る部分が活性化することでドーパミンの伝達がスムーズになり、症状の軽減につながると期待されています。

入眠時レム睡眠期(SOREMP)

睡眠開始から15分以内にレム睡眠が生じる時期を入眠時レム睡眠期(SOREMP:sleep onset REM period)といいます。これはナルコレプシーにおいて覚醒からレム睡眠への移行が生じやすいことを反映する指標とされており、特発性過眠症との鑑別点とされています。

ノンレム睡眠

ノンレム睡眠は、睡眠の一型でありうとうとする浅睡眠から、ぐっすり眠る深睡眠まで、脳波上で3つの睡眠段階に分けられています。通常夜間睡眠の前半に深睡眠が多くあらわれ、この時期に成長ホルモンが分泌され、脳温は低下し、脳が休息・回復すると考えられています。ノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせを睡眠周期といい、成人では80~100分程度のことが多いです。

反復睡眠潜時検査(MSLT)

反復睡眠潜時検査(MSLT:multiple sleep latency test)は眠気の有無と重症度を客観的に判定する唯一確立された検査です。眠気が強いほど早く眠り込むという考えに基づいて工夫された検査で、過眠症の確定診断に用いられ、特にナルコレプシーの診断に有用とされます。通常、睡眠ポリグラフ検査(PSG)の翌日(昼間)に、2時間間隔で4~5回の昼寝試行を行います。1回には20分の昼寝の機会が与えられ、消灯から眠るまで(睡眠波形が現れるまで)の時間を測定します。これを睡眠潜時といいます。もし眠らなかったら20分で終了です。さらに居眠りが生じる際の睡眠の性質も調べ、入眠後15分以内にレム睡眠が生じる場合を数えます。睡眠潜時の長短、入眠時レム睡眠期の有無、夢見の有無(被験者申告)を評価し、眠気の重症度診断およびレム睡眠への移行が容易か否かの判定に用います。

ヒスタミン

ヒスタミンはアレルギーを引き起こす物質として知られています。花粉症の季節に、抗ヒスタミン薬を服用して、頭がボーっとする、あるいは眠くなるという経験のある方も多いはずです。しかし、ヒスタミンは脳内では神経伝達物質として機能しており、覚醒作用や不安を和らげる作用があります。ヒスタミンは脳を覚醒させる興奮性の神経伝達物質で、増えすぎると眠れなくなります。

ヒト白血球抗原

ヒト白血球抗原は「Human Leukocyte Antigen」の頭文字をとってHLAと呼ばれています。白血球の血液型といえるもので、赤血球のABO型をきめる遺伝子座のように、対立遺伝子がAとBだけでA、AB、B、O型が決まるように単純ではなく、複数の遺伝子座A、B、C、DR、DQ、DPがあり、それぞれ多数の対立遺伝子(白血球型)が存在します。たとえばDRB1という遺伝子座は日本人で約40種、世界的には1000種の対立遺伝子が知られHLAの遺伝子レベルだけで膨大な組み合わせが存在します。HLAは自他の区別を認識する分子(主要組織適合性抗原)で、A、B、Cは全身の細胞に分布し自他の区別、DR、DQ、DPは抗原提示細胞に発現して異物認識を行うなど、いずれも免疫にかかわる重要な働きをしています。HLAを調べることで、どんな病気にかかりやすいのかがわかることがあります。

副腎皮質ホルモン

腎臓の上に位置する副腎の皮質から分泌されるホルモンの総称です。生命維持に必須で、体内における無機質・水分代謝の調節を行う鉱質コルチコイド、血糖値の上昇や肝臓におけるグリコーゲンやケトン体の生成を促進する糖質コルチコイド、および生殖機能に関与する性ホルモン(特にアンドロゲン)があります。化学的にはいずれもステロイドで、抗アレルギー作用・抗炎症作用が顕著なものは、薬剤として利用されます。 体内時計ホルモンのメラトニンが睡眠を促進するのに対し、覚醒を促すホルモンが糖質コルチコイドのコルチゾールです。朝方になるとコルチゾールの分泌が始まり、脳の温度が自然に高くなって健やかな目覚めを迎えることができるのです。

不随意運動

自分の意志とは関係なく起こる随意筋の異常運動のこと。律動性(周期的)に生じるものと、そうでないものに大別されます。パーキンソン病にみられる安静時の“振戦”や、周期性四肢運動障害にみられる“ミオクローヌス”は前者の例です。

無呼吸・低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)

無呼吸低呼吸の総回数を記録時間(推定の睡眠時間)で割って,1時間当たりの回数に換算したもの。数値が高いほど重症ということになります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の診断基準とされており、OSASの重症度は5≦AHI<15 で軽症、15 ≦AHI<30で中等症、AHI≧30 で重症と分類されます。AHIが0~4は正常範囲です。

メラトニン

体内時計に働きかける脳内ホルモンで、松果体という脳の中心部にある臓器から分泌されます。覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があり、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。朝、光をあびるとメラトニンの合成が抑制され分泌が抑制されますが、14~16時間後に体内時計から再び指令が出てメラトニンが分泌され、体温、血圧、脈拍を低下させます。メラトニンの分泌が開始されてから1~1.5時間後に眠気が生じ自然な睡眠状態を導きます。

レム睡眠

レム睡眠は、眠っているのに眼球がキョロキョロと動く「急速眼球運動」(REM=Rapid Eye Movement)が出現する睡眠の一型です。脳は脳波上では覚醒時と同じように活発に活動する一方で、随意筋の筋肉の緊張が非常に低下しており、身体を休める睡眠と考えられています。レム睡眠中には鮮やかな夢を見ていることが多く覚醒中の記憶を整理定着させる機能もあるようです。一晩の睡眠の後半に多く出現し、脳温を上昇させ大脳の目覚めを準備しており、この段階で目覚めさせると比較的すっきりすることが知られています。

監修:本多 真 先生(東京都医学総合研究所 睡眠プロジェクト)

更新日:2018年10月01日

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