「過眠症」といわれる病気

  • ナルコレプシー
  • 特発性過眠症
  • 反復性過眠症

特発性過眠症

授業中に寝ぼけてしまう

特徴

発症は10~20歳代が中心で、男女差はないとされています。昼間、眠気におそわれ、居眠りを繰り返すことが、毎日、少なくとも3ヵ月も続きます。頭がぼーっとしてよく働きませんが、眠気は眠りこむのを我慢できないほどには強くないのが特徴です。原因は明らかになっていません。症状は長期間にわたって慢性的に持続することが多いといわれています。

症状

夜に十分眠っているにもかかわらず、昼間、眠気におそわれ、いったん居眠りをすると1時間以上眠ってしまい、目覚まし時計で簡単に目覚めることができません。しかも、すっきりと目覚めることができず、覚醒するまでに何回も再び眠り込みます。寝ぼけが長引き、会話がまとまらず記憶もはっきり残らないような「睡眠酩酊」と呼ばれる状態になることもあります。睡眠時間が延長し、睡眠時間を制限しない状況では、1日の総睡眠時間が11時間以上になりがちです。数ヵ月にわたって、毎日16~18時間も眠る場合もあります。

また、めまい、立ちくらみ、手足の冷えといった体温調節異常、頭痛などの自律神経症状がみられることがあります。

特発性過眠症とナルコレプシーとの違い(+をクリックすると詳細がご覧いただけます)

ナルコレプシーも特発性過眠症と同様に、夜間に十分な睡眠をとっていても日中に強い眠気におそわれる病気のひとつです。特発性過眠症を診断するうえで、ナルコレプシーとの区別は重要となります。

特発性過眠症 ナルコレプシー
  • 居眠りの時間が長い(1 時間以上続くことも)
  • 眠気があってもある程度居眠りを我慢できる
  • なかなか目覚めず、目覚めてもすっきりしない
  • 1 日の総睡眠時間が長い(典型例は11 時間以上)
  • 寝入りばなにレム睡眠はおこりにくい
  • 情動脱力発作*2がない
  • 居眠りの時間は短い(通常30 分以内)
  • 抵抗できずに居眠りしてしまう
  • すっきりと目覚める
  • 1 日の総睡眠時間は正常
  • 寝入りばなにレム睡眠がおこりやすい*1
  • 情動脱力発作がみられる

*1 特にナルコレプシー発症初期には寝入りばなにレム睡眠がおこらない場合があるため、あとで再検査をしてナルコレプシーと診断されることがあります。

*2 情動脱力発作:意識がしっかりしているのに、驚いたり、感激したり、笑ったりという情動の変化によって突然、筋肉の力が抜ける発作。

検査方法と診断

ほかの日中に眠くなる病気と区別するために、睡眠を妨げる原因がないか検査を行ったうえで診断します。

過眠症の診断には、睡眠ポリグラフ検査(PSG)と反復睡眠潜時検査(MSLT)が使われます。睡眠不足症候群と区別するために、検査は少なくとも1週間睡眠不足を解消してから行います。なお24時間PSG、または1週間以上の睡眠表記録とアクチグラフ検査を組み合わせて、1日の総睡眠時間が11時間以上と確認することでも特発性過眠症の診断ができます。

主な検査 特発性過眠症の特徴となる症状
PSG
夜間睡眠の妨害事象の有無を判定
  • 夜間睡眠は質・量ともに異常がなく、よい睡眠がとれていることを確認
24時間PSGまたは
睡眠表+アクチグラフ検査(7日以上)
総睡眠時間が延長しているかどうかを判定
  • 1日24時間の総睡眠時間が11時間以上
MSLT
昼間の眠気の有無と重症度を判定
  • 平均睡眠潜時(眠りにつくまでにかかった時間の平均値)が8分以下
PSGとMSLT
レム睡眠の起こりやすさを判定
  • MSLTと前夜のPSGを合わせて、寝入りばなのレム睡眠が1回以下

「長時間睡眠者(ロング・スリーパー)」*と区別するために、1週間以上、十分な睡眠時間をとらせたうえで眠気の評価を再度行うようにします。

なお、新しい睡眠障害国際分類では、特発性過眠症の特徴にあわせ、MSLTでの眠りこみやすさだけではなく、1日の総睡眠時間が11時間を超える場合に病的過眠ありと診断できることになりました。睡眠時間の延長を確認するためには、24時間PSGを行うか、睡眠表による記録とあわせて手首にアクチグラフを装着して覚醒・睡眠のリズムや睡眠持続時間の計測を1週間続け、1日の平均睡眠時間を算出して確認する方法がとられます。

*長時間睡眠者:適切な睡眠時間が10時間以上必要で、通常の7~8時間睡眠の生活をしていると睡眠不足となって、特発性過眠症と似た過眠症状を呈します。しかし、その人が必要とする睡眠がとれた時には、昼間の眠気などの症状を訴えることはなく、この点で過眠症とは異なります。

特発性過眠症と似た症状を有する疾患*(+をクリックすると詳細がご覧いただけます)

睡眠不足症候群 検査前に睡眠時間を延長させて、慎重に診断
身体疾患による過眠症 病歴、理学的検査、脳画像検査などの臨床検査の結果をみて慎重に診断
薬物等による過眠症 原因となる薬物等を中止後、臨床的な問題の有無を確認して診断
精神疾患による過眠症 うつ病が最もよく知られています。過度の眠気となかなか覚醒できない点でよく似ていますが、MSLTの睡眠潜時が短縮することはありません。
慢性疲労症候群 眠気より疲労を訴えます。MSLTの睡眠潜時が短縮することはありません。
長時間睡眠者 必要なだけ眠れば、日中の眠気を訴えることはありません。

*参考文献:睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)

治療法と対策

治療法は、生活指導と薬物療法を組み合わせて行います。やはり夜間睡眠時間の確保が前提となります。

薬物療法

日中の強い眠気に対して、眠気を抑える覚醒効果をもつ中枢神経刺激薬を中心とした対症療法を行います。夕方以降に服用すると夜に眠れなくなる、また、眠ることができても眠りが浅くなってしまうおそれがあるため、原則として夕方以降の服用は避けるようにします。ナルコレプシーに比べると治療反応性が悪い場合や、副作用が生じて十分な薬物療法が難しい場合が多いため、根気強く治療に取り組みましょう。

生活指導

睡眠表をもとに、医師が規則正しい生活についてアドバイスします。

  • 十分な睡眠時間を確保する(早寝を心がける)
  • 毎日の寝起きのリズムを守る(休日は一旦起きたあと、昼寝をするのがよいでしょう)
  • 平日に仮眠をとる場合には、短時間(20 分以内)で切り上げるとぼんやりしにくいようです
  • 眠る前の刺激物(カフェインの摂取や喫煙など)は避ける
  • 規則正しい3 度の食事と、運動の習慣

など、生活や睡眠の習慣を変えることにより、症状の改善がみられることがあります。

  • 特発性過眠症のメモ
  • 昼間、眠気におそわれる。1時間以上眠ってしまうが寝起きが悪い
  • ノンレム睡眠のメカニズムが障害されていると考えられるが詳しいメカニズムは不明
  • 昼間の眠気対策には薬物療法が有効
  • 思いあたる症状がある場合は専門の医療機関を受診してください。

監修:本多 真 先生(東京都医学総合研究所 睡眠プロジェクト)

更新日:2018年10月01日

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